2012年10月21日日曜日

一本刀土俵入

http://www.eonet.ne.jp/~jawa/kabuki/enmoku/ippongatanadotyouiri.html

主人公の茂兵衛が一文無しの腹を空かせたお相撲さんから、


きりっとした渡世人に変わるところが役者さんの見せどころかな。

あとは、そうっすねー、やはりぐっと胸にくる芝居だぁ!っつーことですね。

同じ作者による「瞼の母」ほどじゃないにせよ、ハンカチは必須(笑)

なんせ、苦しい時に受けた恩を返す話だから、人情味たっぷり。

それも恩を与えた方は気まぐれだったかもしれないのに、

その親切を胸に十年生きてきた不器用な男の話だから。心情を思うと、ついほろり。

幕切れのせりふは有名ざんす。じっくりと聞いてちょんまげ。



【あらすじ】

水戸街道の宿場、取手の裏通りにある茶屋旅籠の安孫子屋の店先に、

よろよろとふらつく足で通りかかったのは、汚い単衣を着た駒形茂兵衛。

力士になりたくて親方に弟子入りしたが、見込がないと旅興行の先で追い払われ、

江戸へ帰る途中だった。何も食べていないという茂兵衛に、

安孫子屋で酌婦をしているお蔦は、立派な関取になる見込はあるのかとたずねる。

「何としてもがんばって立派な関取になり、故郷のおっ母さんの墓の前で、

横綱の土俵入りを見せたい」という茂兵衛の言葉に、

お蔦は巾着や櫛、かんざしまで受け取らせ、「立派なお角力さんになっておくれよ。

そうしたら、一度はお前さんの土俵入りを見に行くよ」と励ます。

茂兵衛は、お蔦の情に感謝しながら立ち去っていく。



10年ほど経った、ある春の日。旅人風の男が、安孫子屋のお蔦の消息を

たずね歩いていた。その男こそ、力士の夢破れ博徒になった駒形茂兵衛だった。

誰もお蔦の居所を知らないので行きかけようとすると、

この辺りの博徒の親分波一里儀十と子分たちがイカサマ師を追ってやってくる。

一行が去った後でやってきたのは、そのイカサマで追われている辰三郎。

実は、この辰三郎、お蔦の生き別れになっている夫だった。



一方、お蔦は取手の宿から少し離れたところで、娘とふたり細々と暮らしていた。

そこに儀十たちが踏み込んでくる。辰三郎がいないと見てとると、

張り番を残して引き上げた。お蔦は、辰三郎が生きていると知って喜ぶ。

やがて辰三郎が帰ってくる。感激の再会もそこそこに、逃げようとして追いつめられ、

絶体絶命のところに来たのは茂兵衛。やっとお蔦の居所を探しあてたのだ。

お蔦は茂兵衛を覚えていなかったが、「恩返しの真似がしたい」と金包みを渡し、

ここは自分に任せろと言う。頼もしい茂兵衛の様子に、お蔦も昔のことを思い出した。

お蔦一家を逃がした茂兵衛は、儀十一味をぶちのめしたあと、

「これが十年前に櫛、かんざし、巾着ぐるみ意見をもらった姐さんにせめて見てもらう

駒形の、しがねぇ姿の横綱の土俵入りでござんす」とひとり口にするのだった。



【うんちく】

昭和六年(1931年)、六代目菊五郎の駒形茂兵衛で初演。長谷川伸の作品。

歌舞伎以外にも映画や大衆演劇でもしばしば上演された、新歌舞伎の代表作のひとつ。

http://www.youtube.com/watch?v=TiMrTgGtxRg&feature=endscreen&NR=1
http://youtu.be/-M6QnpMJIiM

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