海洋大国日本を守れ/「国境離島」に目をむけて
境港市観光協会会長 桝田 知身
日本の陸地、すなわち領土の面積は世界で61番目である。しかし、領海(陸から12海(カイ)里(リ)=22・2キロ)と排他的経済水域(沿岸から200海里=370キロ)を足した面積は、なんと世界で6番目になる。トップの米国の海は762万平方キロ、日本は447万平方キロ。ちなみに中国は日本の約5分の1しかない。さらに、海水の体積で比較すると、4番目になる。日本の海が大きいのは、小笠原諸島や南西諸島など6852もの島により構成されているからである。
しかも、漁業管轄権と海底に眠る資源を調査し開発する権利がそれに伴うので、「現有の権益」のみならず「含み権益」としても膨大なものになる。
たとえば、先年、日本の〝腰抜け外交〟で世界の失笑を買った「尖閣諸島」周辺海域には、海底油田の推定埋蔵量が1千億バレルを超えるという。1千億バレルとは、世界第2の石油埋蔵国イラクとほぼ同じであり、7千兆円という目の眩(くら)むような額に相当するとされる。めざとく狡猾(こうかつ)な中国がこのような「涎(よだれ)の出そうな」案件を見逃すはずがない。中国の国家をあげての強硬姿勢にはそういう背景があるのである。
さらに、日本海域には「燃える氷」といわれるメタンハイドレードが天然ガス消費量に換算すると100年分くらいあるとする見方もある。また、海底には、中国が禁輸して話題を呼んだレアアースなどのレアメタルの鉱物がごろごろしている。
日本がこのように膨大な権益と可能性を秘めた「海洋大国」であるということをどれだけの人が認識しているのであろうか。
少なくとも国家は、尖閣問題の処理にもあきらかなように、「海洋大国」を守る気概などないと言われてもしょうがないような〝対応〟しかできていない!
竹島問題にしても、島根県だけがいくらガンバってみたところで、長い間、国家が〝放置〟し、韓国の「実力支配」をゆるしている現実をくつがえせるわけがないであろう。まさに、「腑(ふ)抜け国家」の怠慢としか言いようがない。
島国ニッポンの領土を囲む国境線は、当たり前のことであるが、すべて海上にある。昔でいえば、いわば〝天然のお堀〟で囲まれているような国である。世界最大のモンゴル帝国「元」の襲来も「海のお堀」が阻んでくれた。それだけに、陸国境のような厳しいせめぎあいと切迫感がなく、国境の住民や漁業関係者などの当事者を除いて、国境意識や国境への関心が希薄になりがちである。
無数の国境離島をもつ日本――。だが、離島振興法は、「国境」地域への支援という視座をもっていない。さらに、無人の国境離島は目を離すとたやすく〝占領〟されてしまう。竹島しかり。尖閣諸島もいつ占領されるかわからない。占領されたとき、パワーで取りかえす肚(はら)も度胸もなさそうな「腑抜けで腰抜けの日本国」に成り下がっていると思われるだけに……。
資源大国になり得る日本の未来を守るためにも、「日本の海」に目をむけ、「国境離島」に目をむけるべきであると思う。
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ますだ・ともみ 1941年、広島県呉市生まれ。北海道大学法学部卒。63年に日本通運に入社。95年11月から2002年6月まで系列会社の境港海陸運送社長。元境港商工会議所副会頭、元水木しげる記念館館長。04年5月から現職。
http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=531791035
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